マンホール蓋のデザインの良さを顔ファン目線で語ってみた
マンホール(英: manhole)は、地下の下水道・暗渠・埋設された電気・通信ケーブルなどの管理(点検・修理・清掃・排気など)を目的として作業員が地上から出入りできるように地面にあけられた縦孔である。
別名「人孔」
の、蓋が好き。
わたしはマンホールの蓋にとても興味がある。
東京23区に設置されているデザイン蓋
興味があると言っても、役割や歴史、作り方や構造などにはあまり関心がなく、とにかく蓋に描かれているものが好きだ。
マンホールのデザイン蓋には、その地域の名物やシンボルなどが描かれていることが多い。
地味でどこにでもあるような蓋もあれば、Tシャツのロゴになってもいいんじゃないかと思うくらいオシャレなデザインの蓋もある。
ほとんどの人からすれば、マンホール蓋は何の面白味もない地面の一部にすぎないだろう。しかし、いつもの道をちょっと気にして見てみたり、隣の町に行ってみたりすると、可愛い蓋、文字がオシャレな蓋、趣がある蓋など、町には意外と面白いマンホール蓋が溢れていることに気づくかもしれない。
私は専門的な知識も美術的な教養もなく、さらにマンホール蓋にもそんなに詳しいわけではない。ただの蓋の顔ファンのヲタクです。蓋ヲ。
そのため素人目線だけど、蓋のデザインの良さを伝えるべく、今まで実際に見た蓋の中で「この蓋のここが良い!最高!」という部分を語っていきたいと思います。
〜北海道編〜
【稚内市】
日本最北端の町・稚内市のマンホール蓋といえばこのデザイン。
南極観測隊のタロとジロ、背景には利尻富士と北防波堤ドームが描かれたもの。
ですが、
個人的にもっと気になった蓋があった。
北海道庁旧本庁舎(赤レンガ庁舎)が中央に、それをぐるっと囲む「HOKKAIDO」の文字と星模様…
パーフェクトすぎる。
すごく、すごくバランスが良くて好き。
文字の大きさと配置が適切すぎるし、なんだか見れば見るほど惹かれます。
今回は稚内市で見つけたけれど、道内には10ヶ所(旭川、札幌、小樽、函館など)に土木現業所があるそうなので、この素敵蓋にもいろいろな町で出会える。
【砂川市】
初めて見たときに衝撃を受けた蓋。
ピラミッド、ピサの斜塔、ストーンヘンジが、一同に会している。
こんなカオスがあっていいんでしょうか。
時空歪みまくり。
素材の鉄蓋感(?)も、蓋のデザインが醸し出すオーラとマッチしている気がする。
なんと砂川市は市章もイケてる。
砂川の「す」を象ったデザインの市章。
なんて素敵市章なんだ。うちの町にもこんなのほしい。
【札幌市】
札幌の観光名所・時計台の周りを2匹の鮭が取り囲むデザイン。
水の流れを表現する曲線が美しい。
札幌の街中では色々な種類のデザイン蓋を見かけるけど、これが札幌市の代表作的な蓋だと思われる。
雪の結晶だけが描かれたものも発見。
文字は一切なくシンプルだけど、デザインの良さでばっちり勝負できそう。
美しさ、可愛さ、上品さ、かっこよさ、たくましさの五角形が備わった蓋。(個人の意見)
ぜひ雪が降る前の冷えた札幌でまたこの蓋とめぐり会いたい。
【小樽市】
あ〜……
良い蓋〜!!!
マンホール蓋に興味を持つきっかけとなった蓋。やっぱりいいな。
コンクリートの白さ、「やすらぎのまち、おたる。」と彫られた面、余白すべてが美しい。
〜東北編〜
ねぶた祭がモチーフとなったデザイン蓋。
ねぶたと跳人たちの描き方が繊細で、初めて見たときは感動した。
マンホール蓋なのにねぶたの迫力がすごい、ちゃんと怖いし。
跳人の躍動感もしっかりと伝わってくる。
りんご推しが凄まじい町、弘前市。
弘前市内で見られるほとんどのマンホール蓋にりんごが入っていて、蓋の種類も豊富だった。
特に写真左下の消火栓蓋、消防車を囲んでいる◯(まる)が全部りんごの種の形になってる…!
細部までりんごへのこだわりが強く感じられる。
犬。
秋田犬です。
生き物デザインの中でも魚や鳥が描かれているものはかなり多いけど、犬がメインのものは珍しい気がする。
犬の上にある市章も、お金持ち学校のエンブレムのような高級感がある。
そして小さいマンホール蓋の方には子犬が!
大きい蓋では成犬だったけど、小さい蓋では犬も子犬になっている。
なんて素晴らしい仕掛け。犬可愛い〜。
かまくらと焼きそばと高橋優さんが有名な町・横手。
(横手駅に降り立って即得られる3つの情報)
名物のかまくらと横手城が描かれた、古風で心が落ち着くようなデザイン。
細かく散りばめられた雪と桜がとても上品です。
カラー蓋もやさしい色合い。
たぶん「雪の宿」のパッケージになっててもおかしくないんじゃないかと思う。
それぞれ「山居倉庫」と「日和山公園」が描かれている。
ひと目で酒田市の観光名所がわかるデザイン。
ここまで雰囲気が柔らかかったり、繊細なデザイン蓋をいくつか紹介してきたけど、こちらは正反対で線が太め。
版画か切り絵にしたら楽しそうなマンホール蓋第1位。
市章が良いなと思ったのでシンプルな蓋も取り上げてみた。
北海道砂川市の市章は「す」を象ったものだったけど、酒田市は「さ」が渦を巻いている。
マンホール蓋を観察していると同時に市章もデザインの一部として気になってくる。
〜関東編〜
【東京都小金井市】
枝垂れ桜が細部まで丁寧に描かれた蓋。
個人的に「こがねい さくら」の文字がすごい好き。
フォントも良いし、「こがねい」の詰まり具合と「さくら」の微妙な字間にときめきます。
【東京都昭島市】
昭島市でなぜクジラ?と思ったら、昔市内でクジラの化石がまるまる見つかったことがあるからだそう。
カラー蓋が存在するにも関わらず、実際には設置数が少なくて町中で全然見つからないというパターンも多いけれど、昭島市はカラー蓋超頻発地帯だった。
歩いていたらそこら中にカラー蓋が、しかも広範囲に渡ってある。とにかくある。
(少なくとも駅前から市役所に行くまではすんごいある)
カラー蓋がこれだけあると色味の比較も楽しい。
写真は上2つは色もはっきり出ていて新しそうだけど、右下なんてくじらと空の色が変わらないくらい色が褪せまくっているし、やけに砂っぽい感じがする。真っ白になるまで応援したい。
もうひとつ昭島市。
「毎日気持ちは節水曜日」
とってもいいね。
【神奈川県横須賀市】
〜ペリー来航〜
ペリーの顔がインパクトあるし、海に浮かぶ黒船といいTHE・横須賀な蓋。
【神奈川県営水道】
ヤマユリ、イチョウ、カモメと、それぞれ県の花、木、鳥が描かれている。
デザイン的に東京23区のさくら蓋の神奈川県版みたいな蓋ですね。
これは藤沢市で見つけたけど、この蓋は神奈川県のいたるところに設置されているらしい。
〜北陸編〜
(雨ですごい光っててすみません…)
橋の全体像を描くのではなく、記号っぽく、模様っぽくデザインされているところがオシャレ。
経年によるものかもしれないけど、この微妙な色使いが良い。
【石川県金沢市】
どこにでもあるシンプルな亀甲模様。
よく見ると中央の花の中に「下水」の文字が。
「下水」
下水なのに可愛らしい。このデザインのブローチを付けたとしても下水だとバレないほどのさりげなさ。良い文字してる。
デザイン蓋はイラストや模様だけでなく、文字にも見所がたくさんある。
〜東海編〜
シンプルだけど渋くて素敵な蓋がある。
熱海市の市章、とても良いなぁ〜。
花のなかに温泉マーク。
1枚目の蓋はとてもシンプルだけど、大きめに配置された市章の存在感によって、とても華やかに見える気がする。市章映えしている。
【愛知県名古屋市】
国内屈指の大都市・名古屋で最もよく見られるデザイン蓋がこちら。
アメンボ。
アメンボでした。
自分が無知なだけで地元では結構名物として扱われてたりするのだろうか。
名古屋だし他にもっと良い題材がありそうなのに、なぜアメンボを…とアメンボには失礼だけどそう思ってしまった。
だけど、大都市感を詰め込みまくり&推しまくりよりもアメンボ1匹のほうが潔さとインパクトはある。
さりげなく水面がアシンメトリーなのもリアルだし。
なんかアメンボ良い気がしてきた。
(このアメンボは名古屋市上下水道局のイメージキャラクターだそうです。)
そんなアメンボがおそらく名古屋市の代表的な蓋だけど、名古屋の数ある名物を活かしたデザインの蓋もちゃんと存在する。良かった。
名古屋港、宮の渡しと新幹線、名古屋城とテレビ塔、東山動物園、国際会議場がカプセルっぽいものの中に入っている。
このごちゃごちゃ感。アメンボとは対照的。
下にあるのはおそらく波だけど、びよんびよんすぎる。なぜその形になったんだろう。好きだけど。
シャチホコがばっちり描かれている。
ちゃんと名古屋っぽい!
可愛らしいハマグリの6つ子。
昔のアニメのキャラクターにいそう。
2005年設置開始なので15年ものの蓋になる。
表面が剥がれているところも良い味を出してる。
なんかこの蓋見てると、小学校の頃に使っていた鉛筆が昔の筆箱から出てきたみたいな気持ちになる。
マンホール蓋のファンではなくても、良さが伝わるのではないでしょうか。女子ウケもしそう。
だってすごく可愛い。
こんなに可愛いの素晴らしくないですか……?
しかも1991年から存在するって。素晴らし…。
建物や船の描かれ方も、可愛い動物たちの世界観に合っている。ぽってりしていてメルヘン。
おまけ。
スーパーの入口でお出迎えしてくれるラブリー蓋
【東邦ガス】
岐阜駅の商店街を歩いていて突然見つけた幾何学模様のマンホール。
文字も一切なく、デザインにヒントもないため何の蓋なのかずっと謎だった。
そのミステリアスさも蓋のデザインと相まって魅力的に感じられた。お気に入り。
色々調べた結果、東邦ガスの蓋だということが判明。
愛知、岐阜、三重の3県で見ることができる。
〜関西編〜
よく街中で見られる大阪城デザインの蓋。
写真はカラーだけど、街中のほとんどはモノクロ蓋。カラーは心斎橋筋商店街のアーケード近辺にしかないイメージ。(間違ってたらすみません)
私設水道。
しぶきがとても良い形をしている。お気に入り。
「EXPO 1990」の文字が入ったデザイン。
色合い・質感ともにかなりヴィンテージ感が漂っている気がする。ヴィンテージって何かよくわからないけど…。
このアンテナみたいでかっこいい大阪市の市章が蓋のデザインにすごく映えている。これも市章映えだ。
町の雰囲気に合った上品なデザインの蓋。
平安時代の貴族が乗っていた「御所車」の車輪を模しているそうで、たくさんの凹凸を作ることで足元の滑り止めとしての役割も果たしている。
美しいだけじゃなくて実用的。
それはそうと2枚目中央の「電気」めっちゃ良い…。
シンプルな蓋に「電」だけのものや雷マークのものはよく見るけど、デザイン蓋の「電気」はあまり見ない気がする。
しかも縦に書いてあるところもポイント高い。
ツッコミどころが多い蓋。なんだこのパレード具合は。
犬のキャラクター、花、大型船、ヨット、観覧車、橋、花火とかなり詰め込みまくりの情報過多。
名物が多いのに笑顔のアメンボ1匹で勝負する名古屋市を見てくれよ、、!
と思ったこともあったけど、そんなやりすぎなところが憎めなくてなんか好き。かわいらしいマンホール蓋。
〜中国・四国編〜
下関の「し」の中にフグが入っているデザイン。
フグ、何も考えてなさそうだけど憎めない顔してる。
人気の蓋みたいです。
こんな無垢な表情をしたフグが、こんなことになるなんて。
点字ブロックに飲まれているマンホール蓋はよくあるけど、こんなにかわいそうな気持ちになる蓋は見たことがない。
こんな罪のない目をしたフグになんてことを……。
海が近い町だからか、波のようなデザインになっている。シンプルだけど結構好き。
真ん中の市章のところを隠されたら、どっちがどっちかわからなくなってしまうでしょうね。
〜九州編〜
【福岡県福岡市】
幾何学模様の蓋。
実は、鳥、ヨット、街並みなどを抽象的にデザインしたものの組み合わせになっている。
めっちゃかっこい〜。
愛知・岐阜・三重で見られる東邦ガスの蓋もそうだったけど、マンホール蓋と幾何学模様って相性が良い気がする。
(照)
【福岡県北九州市】
小倉駅北口にある「あるあるCity」の目の前に設置されている。
キャラクターものでインパクトもあるので蓋ファン以外からも人気が高そう。
銀河鉄道999デザイン以外だと、ひまわり、イチイガシの実、花の形をした市章と、意外に自然派。
キャラクター蓋よりも、自然蓋で数を攻めてくる北九州市が好きだ。
3枚目の市章のみの蓋も、花型の市章から伸びる波線が美しい。
〜番外編〜
町単位だけではなく、商店街などのオリジナル、団地、発電所、基準点、測量、など独自のデザインが施されている蓋もある。
【測量】
フォントがかっこよかったり文字メインのデザインが結構好きなので、この「測量」は…良い。
「測」のさんずいの形や全体のカクッとしたところも、傾きも鉄っぽさも全部良い。
シンプルだけど美しくて、見てて飽きない蓋。
【都営団地】
天気の集大成のようなデザイン。
どうしてこんなデザインにしたんだろうな。
この素敵蓋が見られるのは都営団地だけ。
みんな、団地行こう。
【上野駅前商店街】
「かねの鳴るまち 上野駅前商店街」
人通りの多いアメ横の脇にポツリとあったこの蓋。
長い間人に踏まれ、雨風にさらされてきたのでしょう。
「上野」の文字の上のテカりに貫禄がある。この蓋も鉄っぽさがかなり良い味を出している。
【星座】
埼玉県の川口駅東口にある「ふじの市商店街」に設置されている星座の蓋。
写真の蓋以外にも12星座が商店街の歩道にずらりと並んでいた。
買い物も鑑賞も楽しめる商店街。
以上です。
蓋の歴史や描かれている建物などの解説、人気がありそうな蓋(この記事でいうと北九州市のメーテル蓋)などの紹介は少なめに、蓋の顔ファンヲタク目線のみで語らせていただきました。
派手な蓋より渋い蓋が好き。
あと、まだ旅行した場所が少なくて若干北に偏ってしまった…。自由に旅行できるようになったら、行ったことがあまりない中国四国、九州地方にもお気に入りの蓋を見つけたいと思う。
今回は実物を見たことがある蓋のみに限定し、さらにその中から選んだ一部について語らせていただいた。
そう、ほんの一部だ。
実はずっと前から好きで気になっている蓋が全国にはまだまだたくさんある……。
(北海道古平町の蓋は好きすぎて一時期スマホのロック画面にしてたし、木古内町と石狩市と室蘭市も気になるし、秋田県深浦市の「夕陽海岸ふかうら」は完全に好みだし、宮城県女川町と富山県氷見市ずっと前からお目にかかりたいし、岡山県笠岡市の絵のタッチかなり好きだし、島根県出雲市はカラー蓋のアウトラインに北海道ぽさがあって気になるし、高知県高知市のクジラが2匹…)
そんな「実物は見たことないけど好きな蓋」についても書きたかったけど、これはいつか実物が見れてからにしよう。
ちなみに、これまで紹介してきた写真すべてに足が写り込んでいるのは筆者のうっかり。
ではなく、
こんなふうに撮っています。
撮れた。
もちろんマンホール蓋単体で撮ったほうがコレクター的には良いのだろうけど、自分のオリジナルの記録として残したい気持ちがあって、足も含めて写真に納めていました。
観光名所に行ったら景色だけじゃなくて、自分も一緒に写真に写りたくなるのと同じで、これは自分と蓋の記念写真なのです。おすすめ。
コツは少し上めにカメラを構えて、スクエア(1:1)で撮ること!
スクエアのほうが収まりが良いし、まっすぐに撮れていなくてもあとで傾きの修正がしやすくなる。
最後に、マンホール蓋のデザインの良さがちゃんと伝えられたかはわからないが(なぜなら字間にときめいたり市章映えなど意味不明なことを書いてしまったから)、旅行に行った時には足元に注目してみるとちょっと面白いかもしれない。
その場所の名物や推してるものがわかったりするし、同じマンホール蓋なのに自分の住んでる場所の蓋と全く違っていて新鮮に感じられるだろう。
たまには下を向いて歩いてみるのも、きっと楽しい。