呼吸ブーム
『呼吸ブーム』
この春、前代未聞のブームが到来した。
かつて煙を肺に吸い込むタバコという嗜好品があったそうだが、異様な値段の高騰と国民の健康志向により、今から50年ほど前に吸う人はいなくなったという。
最近はもっぱら「呼吸ブーム」だ。
人気の健康バラエティ番組で、酸素を深く吸い込むことによってリラックス効果がもたらされ、アンチエイジング、勉強や運動、恋や仕事にも効果が発揮されると紹介されたことがキッカケで、お金のかからない娯楽として流行りだした。
はじめは無色透明の酸素をビニール袋に入れて一服したり、植物の小さな鉢植えを携帯して吸引するのが主な楽しみ方だったが、徐々に匂い付き、色付き、金粉入りなどのニュータイプの呼吸が登場した。年齢制限もなく、場所も問わずに楽しめるので、人々は皆、いつでもどこでも呼吸をしまくった。
そのうち、呼吸ハイ、呼吸依存症、挙げ句の果てには呼吸をすると太る、呼吸のしすぎで地球上の酸素がなくなってしまうというデマから、拒吸症で死ぬ者まで現れるようになった。
特に問題になったのは、高級な空気の闇取引だ。本来酸素は無料で吸えるものだし、お金がかからないため広まったにも関わらず、ブームとなった今、人々はそのことを忘れてしまっていた。
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けっこう前に書いた、人生で初めてのやつです。
たぶんとてもありきたりなお話。
良いところは30秒で読めるところ。
今日の1枚。
バリッとしていてかっこいい アイスサンド
銀色のつつみに、昭和歌謡を歌う男性歌手の衣装を思い浮かべました。
食感はバリッとしていないです。