夏の早朝

空想や妄想をしてみたい。

好き蓋との出会いとヤッホー茶漬け(富山県高岡市・氷見市〜石川県金沢市)

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10月17日(土)

わたしは北陸新幹線かがやきに乗っていた。

土曜日の朝の車内はまだ空いていて、静かに進んでいく音が心地良い。眠ったり、たまに起きたりを気ままにくりかえす。上越妙高あたりで外を見ると、少し紅葉した山とくもり空が見えた。

 

7ヶ月ぶりの旅を決心したのは2日前のことだった。火曜日に「旅に出ようかな…」という考えが浮かび、散々迷った末、木曜日の夜に宿の予約をした。

旅に出る時の交通手段は、鈍行か深夜バスのどちらかを使うことが多いけど、今回はGo To トラベルの新幹線と宿のセットが安かったので、はじめてGo Toを利用してみた。

 

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やっぱり新幹線といえば、ホット緑茶とトッポだよね…  (この日はトッポ買わなかったけど)

 

新幹線のチケットは金沢まであったけど、手前の新高岡駅で降りるつもりだった。新高岡駅で降りれば徒歩30分のところに高岡駅があり、JR氷見線に乗ることができる。終点の氷見駅にはわたしの好きなマンホール蓋があるのでぜひ会いに行きたい…

そう思って新幹線のホームに行くと、自分の乗る新幹線が新高岡駅に停まらないことが判明した。まだ出発してもないのにもう計画崩れたじゃん、、と思ったけど富山駅で降りて、はくたかに乗り換えることで解決した。良かった…

 

新高岡駅は新幹線が停まるだけあって、大きくて立派な駅だった。

南口にはヴィーナスフォートくらい横長の巨大イオンがあった。初めて訪れる町でもイオンを発見すると、そこで暮らす人の生活を感じられて安心する。

 

わたしの目指すJR高岡駅は北口方面なので、蓋や町並みを観察しながらのんびり歩いた。

 

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カット・パーマができるおしゃれの店 谷川

 

 

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「雪」の文字は北陸や東北でしか見ないから出会えると嬉しい。

 


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高岡市の「高」を象った市章が素敵な蓋たち…

市章が入った蓋はあるものの、ここでは絵柄や文字が入ったようなデザイン蓋は見られなかった。

 

30分ほど歩いて高岡駅に到着した。

高岡駅からはすぐ氷見線に乗る予定だったけど、高岡の町が楽しそうなので、電車はもうちょっと散歩してからにする。

 

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立派な駅のロータリーから見える、すごいオーラを纏ったビル。

 


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スナック街らしき通りと高岡トロフィとツルヤデパート

 

途中、世界観がめちゃめちゃな喫茶店看板を発見した。

 

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外枠はステンドグラス風に天使とディズニーのバンビのイラストでファンシーなのに、その中に大仏の写真って、、一体どんなセンスしてるですか……   最高。

中の雰囲気も良さそうだったので入るかとても迷ったけど、やっぱり先を急ぐことにした。また高岡に来たらぜひ喫茶Joyでごはんを食べたいな。

 

喫茶Joyのある通りを少し進んで、横断歩道を渡ってから右に曲がると、突然遠くのほうに大仏が現れた。

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(すごくわかりにくいけど、真ん中の奥の方に大仏がいる)

 

わたしは大仏類をたぶん人生で一度しか見たことがない。

中学2年生の校外学習で鎌倉に行った時は、それほど興味がないので鎌倉大仏の見学には行かずに、銭洗弁財天で銭を洗っていた。

1年後に修学旅行で京都・奈良に行った時は、奈良の大仏を見るのがコースに組み込まれていたので見学したけど、そんなに興味もないので「ふ〜ん」と思って終了だった。

 

そんな状態だったけど、せっかく近くに来たので大仏を見に行くことにした。はじめての自主的な大仏。

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この大仏は高岡大仏というらしい。

高岡大仏は、鎌倉、奈良に並ぶ三大大仏のひとつだそう。はじめに遠くから見た感じよりかなり小さめだったので、三大大仏には大きさが重要ではないっぽい。遠くからでもよく見える輪っかと、やけに平面的な背中が印象的だった。

 

大仏を見終わって、来た道と反対方向に歩いていると、左のほうに先の見えないぐにゃんと曲がった道を見つけた。

 

面白そうな道だなと思って進んでみると…

 

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大仏飲食店街……


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すごい、すごすぎる、、


まず「大仏飲食店街」というネーミングも、隠されてるみたいな道に存在するのも、なんだかここ一帯だけ別世界にある飲食店街みたいだ。

おそらく全店廃墟化しているけど、短い距離に香ばしい店たちがぎゅっと並んでいて夢のようでした、、ここだけ完全に時間が止まっていた…

出会えて良かったな、大仏飲食店街。

 

高岡の町を歩き回り、良い飲食店街にも出会えたところで、そろそろ先に進もうと駅のあるほうに向かって歩いた。

現在地からは先ほどの高岡駅ではなく、隣の越中中川駅に行くと良い感じだったので、そこから氷見線に乗ろうと思った。

 

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新たに出会った蓋。

中央の富山県章と「消雪」の文字が富山の冬の景色を連想させて良い〜。

 

あともう少しで越中中川駅に着くというところで、あることを思い出した。

わたし、新幹線を降りてからほとんど時計を見ていない。そして全く電車の時間を調べていない。久しぶりの感覚で忘れていたけど、旅先では電車の時間を気にせずに行動したらダメなのに……

 

結局、駅に着いてから時刻表を確認すると、次の電車は1時間後だった。


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越中中川駅の駅舎はカラフル

 

新幹線で新高岡駅に着いてからすでに2時間くらい歩き続けているので、そろそろ休みたかったけど、この駅で1時間ぼーっとしてるのはもったいないので隣の能町駅まで歩くことにした。

 

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能町駅は想像以上に遠かったし、途中写真を撮ったりしていたので結局電車の時間ギリギリで着いた。越中中川駅からの思わぬ追加徒歩でかなり体力を消耗した気がした。

 

氷見線赤い電車に乗って、次は雨晴駅に向かう。雨晴は海がよく見える駅として有名らしい。

 

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本当にすごく海が見えた。

 


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漂流してきたおいしい牛乳と中国からのなにか。海を触ったら透明であたたかかった。

 

 

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高岡市のマンホール蓋。

新高岡駅に着いてからずっと高岡市にいたのに、ここに来てやっとデザイン蓋に出会えた。

雨晴から見える景色がそのまま描かれた風流なデサイン。

 

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道の駅雨晴で高岡市のカードも手に入れたので、次は終点の氷見駅を目指す。初めは電車で向かうつもりだったけど、待ち時間が長くてもったいないので路線バスに乗った。はじめから誰も乗っていなかったし、さいごまで誰も乗ってこなかった。

 

バスは大きな道路ではなく狭い道をぐんぐん進んでいった。

 

ふと窓の外を見ると、

 

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いる……

 

 

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わたしの好きな氷見市の蓋がいた……

しかも動画も撮った。
道路にわたしの好きな蓋がこんなにもたくさん設置されてる場所があるなんて。

 

バスが氷見駅入口に到着して、ついに蓋と対面した。

 

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すごい。本物だ…

 


実は1年半ほど前から氷見市の蓋が気になっていた。
魚が描かれている蓋はよくあるけど、三ツ矢の形に重なっているものは珍しくインパクトがあるし、魚が主役かつ詳細に描かれているところが好き。でもそれ以上に、わたしには上手く表現できないけど、何とも言えない魅力がこの蓋にはあると思います。本当に良い蓋……

 

今回の旅はずっと好きだった氷見の蓋ではなく、金沢の某所に行くことが目的だったので、ついで扱いでこの蓋に会いにいってもいいのかな… やっぱり日を改めて氷見の蓋のためだけに旅に出ようかしら… と頭を悩ませていたけど、「推しは推せるうちに推せ」「会いに行けるうちに行け」と言われているように、せっかくチャンスがあるのだから行くべきだ!と思って会いに行った。やっぱり行って良かった…


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こちらの小さい蓋も良い…

うちの庭にほしいな

 


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なんと氷見市寒ブリ以外の蓋も素晴らしい。

「キットちゃん」という市のキャラクターらしい。頭に寒ブリ乗せちゃってるよ…

 

氷見市の蓋はずっと気になっていたので、2020年のうちに会いに行くというひそかな目標が達成できて良かった。

町によってはデザイン蓋がほとんど道に設置されていないところもあるけど、氷見市は町中に寒ブリの蓋が溢れていて鰤のカーニバル状態でした。(わたし目線) いいな、氷見市民…。



好きな蓋とはじめましてを終えて、前から気になっていた「氷見きときと寿し」で遅めの昼ごはんを食べに行く。

氷見きときと寿しは北陸で有名な回転寿司チェーンで、富山に行ったら絶対にきときと寿しに行こうと心に決めていた。

 

わたしはGo Toトラベルの仕組みなどよくわからずに予約したけど、どうやら知らないうちに地域共通クーポンを5000円分も手に入れていた。棚からぼた餅じゃん…(違うけど)

しかも、きときと寿しはクーポン利用対象店だったので、無料(じゃないけど気持ち的に0円)でおいしいお寿司を食べまくろう…!と楽しみしていた。

 

氷見にはきときと寿しの本店が駅から3.6kmの場所にあった。徒歩だと帰りの電車に間に合わなくなるので、観光協会のレンタサイクルを借りた。1日200円(9:00〜17:00)だし、返却場所も3ヶ所あるのでバスよりもたぶんお得。そして自転車は楽しい。

 

土地勘はなく全然知らない道だけど、とりあえず寿司がありそうな方角に向かって自転車を漕ぎ始めた。

 

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田んぼと山とレンタサイクル。

 

自分ひとりだけの道を自転車で駆け抜けるのはとても気持ちが良い。

こんなにも速く風を感じられて、なんだか最強みたいな気分になった。

 

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途中、氷見昭和レトロ館という面白そうな施設を見つけた。

入ろうと思ったけど、入ったらたぶん寿司を食べる時間がなくなるし、わたしはこういう施設でおじいちゃんに話しかけられて長居しがちなので見学はやめておいた。

近々「氷見平成館」もできるらしい。めちゃめちゃ面白そう〜。昭和以上に興味深いかもしれない。完成したらぜひ行ってみたい。

 

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自転車を漕ぎ続けて25分くらいで「氷見きときと寿し 氷見本店」にたどり着いた。

寿司、食べまくるぞ……!

 

と思ったけど、どうやらGo To トラベルのクーポンには紙クーポンと電子クーポンがあるらしく、わたしの持っている電子クーポンは、きときと寿しでは利用対象外だった…

高級回転寿司食べまくりの夢が早々に破れた。電子クーポン、、、、、

 

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トロ3貫盛り、納豆巻き、甘海老を食べた。

分厚めの魚は柔らかく、しゃりも大きくて食べ応えがあって美味しかった。

Go To トラベルの紙のクーポンを持ってたら20皿くらい食べたかった。電子クーポン、、、


お寿司を食べて、16時半頃にお店を出た。

山と田んぼに囲まれた夕方の氷見は少し寒かったけど、温かい緑茶と美味しいお寿司のおかげで、身体の中はぽかぽかしていた。

自転車の返却時間は17時で、その13分後には高岡行きの電車が出る。まだ30分くらいは時間があるので、海沿いのサイクリングロードを通って駅に戻ろうと思った。

 

が、サイクリングロードに出るまでに道に迷ってしまい、サイクリングロードにたどり着くまでに10分近くロスしてしまった。

17時の返却時間に間に合わないと観光協会の人に迷惑がかかってしまうので、借りたママチャリでサイクリングロードを爆走した。もはやそこが海沿いである必要なんてなく、景色なんてほとんど見ずに、背の高い木が延々続く道路沿いをとにかく漕ぎまくった。

 

今日は昼も相当歩いたのに、なぜわたしは富山で必死に自転車を漕いでるんだろう…と思いながらもすごく頑張った。

 

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結局、返却時間を2分すぎて氷見駅に到着し、予定通りの17時13分の電車に乗ることができた。

今日はずっと雲っていたけど、帰り道の空は嘘みたいにきれいだった。

(少しだけ明るさを調節したけど無加工でこの空はすごいでしょう…)

 

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手に入れた氷見市のマンホールカードとお茶

 

 

乗り換えで間違えて逆方向の電車に乗ってしまい、慌てて降りた知らない駅で呆然とするやつをやってしまったけど、無事に宿のある金沢駅に到着した。

 

金沢は2年半ぶりで2度目。前回に来た時も夜だった。

2年半前に行った時は、まだ18時台なのにすべての店が閉まっていた。すべてというのは盛りすぎかもしれないけど、本当にそのくらいの勢いで店が閉まりまくっていた。大きなデパートが立ち並んでいて都会の雰囲気があるのに、びっくりするくらい人がいなかった。

夜行バスまで時間があったので、しばらく街を歩いたけど、真っ暗で誰もいない見知らぬ地を散歩してるわたしって…と虚しくなった。本当に、すごく真っ暗だった。

 

それが今回はなんということでしょうか。

人がいるし、店は閉まっているのもあるけどまあまあやってるし、とにかくたくさん人がいた…!人がいるだけで安心度が格段に違う。

どうやら金沢は駅から少し離れた片町という場所が1番の繁華街らしい。

前回行った時は、片町までたどり着く前にゴーストタウン具合にびびって引き返してしまったけど、そうか、片町だったか…と2年半越しに気づいた。(しかも前回は平日に行ったから余計に人がいなかったんだと思う)

 

ホテルにチェックインすると、お風呂に入るでも寝るでもなく、テレビを見てぼんやりと過ごした。

この旅の真の目的は氷見市のマンホール蓋を見ることではなく、このあとにあった。

 

それがこれです。

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ヤッホー茶漬けこと「志な野」

 

メニューがあるのにも関わらず、頼めるのは1種類しかないだとか、接客がすべて「ヤッホー」で行われる などの情報を聞いて、数年前からずっと気になっていた。

そんなヤッホー茶漬けが10月24日に閉店することを知り、どうしても行ってみたくて今回の旅を決心した。

 

閉店間際だからか、ものすごい行列ができていた。

わたしは開店ちょうどの21時から並びはじめた。初めはそこまで寒くなかったけれど、10月中旬の夜の金沢はじわじわと寒く、じっとしていると足や手の先が固くつめたくなって、身体が芯から冷えていくのを感じた。

あまりにも寒いし、iPhoneの充電も危ういし、もう諦めて帰ろうかなと50回くらいは思ったけど、これが旅の1番の目的なのにここでヤッホー茶漬けに行かないでどうするんだ…と気持ちを奮い立たせて頑張って並んだ。(偉い…)

 

21時から並んで、お店の中に入る頃には23時になっていた。


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メニューは色々あったけど、席に座ったら「ごはんヤッホー」「出汁ヤッホー」と言われて、これらが出された。

お茶漬けの具材の種類はこんなに豊富でごはんはおかわり自由。

 

梅や昆布をトッピングして、自分で出汁を注ぐ。

湯気が立ち上るお茶碗を手に取って、出汁をひとくち飲んだ瞬間、氷が溶けるみたいに、寒くてかたくなった体が解れていくようだった。あったかくて天国みたいな気持ちになれた。

具材をごはんの上に贅沢に乗せて、2ヤッホーして、ほかほかでアパホテルに帰った。

 

 

「巨大観音像と廃墟編」につづく