スパゲッチマカロニの店(愛知県岡崎市)
2019年夏のこと。
今日は名古屋に遊びに来た。
久々の遠出だった。
見知らぬ土地に、ぽんと自分の身体ひとつで置かれる感じ。とても好きです。
電車の中では久しぶりにラジオを聴いた。
夜になっても宿が決まっていなかった。
それでもあまり焦る気持ちもなく、私は行きの電車の中で見たある建物のことを思い出していた。
名古屋駅到着間際の車窓から見えた「湯〜とぴあ宝」はネオン管の文字が可愛らしかった。
「湯〜とぴあ宝」はJR笠寺駅から徒歩7分の場所にあるスーパー銭湯だ。24時間営業、リクライニングシート完備の休憩スペース有り(男性専用・女性専用・男女共用)、そして漫画読み放題。
私は名古屋駅から笠寺駅まで電車で向かったけど、金山駅からは無料送迎バスも出ているらしい。
名古屋駅から近い24時間営業のスーパー銭湯もあったけど、「湯〜とぴあ宝」というネーミングが気に入ってわざわざ笠寺駅まで来た。
今夜はここで朝まで過ごすことにした。宿無し回避。
22時頃、「湯〜とぴあ宝」に無事到着したのは良いが、その日は祭の踊り子らしき人たちでかなり混み合っていた。受付にも祭り関係者の長蛇の列ができていて20分くらい並んだ。
もし入れなかったらどうしよう…
と思ったけどなんとか入場できてホッとした。
大浴場のシャワーも休憩スペースもお祭りの人たちで大混雑だった。
混んでいるのは別に良いのだけど、
これ…もしかして寝る場所ないのでは?と思った。
女性専用休憩スペースのリクライニングシートは席数が少ないこともあり、とっくに満席だった。残る睡眠の取れる場所は男女共用休憩スペースのみ。
ここが空いていなかったら漫画コーナーでオールするか、通路のソファで起きたフリして寝るしかない。
共用休憩スペースに入ってみる。
パッと見は全シート埋まっていてひやっとしたが、1番奥のちょうど良さようなシートが開いているのを見つけた。
しかも、隣3席がお母さんと小学校低学年くらいの男の子という超治安の良さそうな場所だった。奇跡。
私はなんとか寝るスペースを確保できた。
夜中の2時くらいに「もう朝!?」と一瞬目が覚めた。
深夜バスの時もだけど、本来眠るような場所ではないところで寝ると、ぐっすり眠れて短時間ですぐに目が覚める。すごく濃縮された睡眠をとった。
そして朝になった。
ありがとう、湯〜とぴあ宝。
8時半頃に岡崎駅に到着した。
JR岡崎駅と「岡ビル百貨店」のある名鉄 東岡崎駅は微妙な位置関係にあった。
直通の電車はなく、徒歩だと43分、バスだと20分かかる。
私は岡崎駅からレンタサイクルで東岡崎駅に向かうことにした。
全く土地勘のない場所だけど、ほぼ一本道なので迷わず進むことができた。
自転車を漕いでいるとイオンモールの近くに気になるお店を見つけた。
浅井道具店
古い家具や道具が売られているお店だった。
このような骨董品店は様々な場所で見かけるけど、入ったことはあまりない。
浅井商店も入りにくい雰囲気はあったが、なんとなく入ってみることにした。
入口付近には食器や置物などが所狭しと並べられていた。
その部屋が終わると、奥に土間が続いていた。
入口付近の部屋よりも、倉庫のように使われている印象だった。急に大きな顔が彫られたアジア風の置物が出てきたりして怖かった。かと思えば、昭和ファンシーな文房具や、雑貨、レコード、漫画雑誌も売られていた。
この土間で終わりかと思いきや、右奥にも空間が続いていた。
手前にはトイレがあり(中を見てみたらもちろん和式)、ドアの外側には様々な種類の鍵が3、4個ほど付いていた。
トイレのドアの外側にそんなにたくさん鍵を付ける必要があるのだろうか。
怪しげなトイレの先には居間があった。
壁中に古い掛け時計が掛かっていて、ほとんどの時計が動いていた。
バラバラの時刻を指しながら針の音を立てて動く時計に囲まれるのは、とても不思議な感覚だった。
その居間で終わりかと思ったら、さらに2階、3階へと続く階段があった。
正直あまり覚えていないが、上の階には机や箪笥などの大きな家具があったような気がする。
日の差した部屋で、静かに並んだいくつもの古い家具と自分だけの空間だった。
2階と3階はぐるっと1周したらすぐに戻ることにした。
階段の踊り場のところに大きな鏡か、
女性が描かれた屏風あったような気がする。
階段を降りるときが1番怖かった。
私はあまり骨董品店のようなお店に行ったことがないので、これがスタンダードなのかもしれないけど、やっぱりトイレの鍵は謎だったな。
ちなみにこれが実際のトイレの写真。
人生初フィルムカメラで撮ってみたけど、明るさや距離の設定を間違えてこんなことになってしまった…。
無駄に怖くてすみません。決して心霊写真ではないです。
右のほうに見える銀色のものが鍵。他にもドアノブ付近と、壁とドアを留めるような鍵も付いていた。
もし岡崎市に行くことがあったら見てみてください。
浅井道具店を出て、再び自転車を漕ぎ始めた。
岡崎市のマンホール蓋。
岡崎市の名物がきれいにまとめられている。
寄り道をしながらも10時すぎには東岡崎駅に到着した。
岡ビル百貨店
今回の目的地「岡ビル百貨店」は名鉄・東岡崎駅の駅ビルになっている。
1階部分に改札口があり、2階と3階にテナントが入っている。
看板付近のアップ。
この階段にては
禁煙・禁腰掛・禁飲食
たしかに季節は夏だった。
サマーセールの看板。
「岡ビル百貨店」の「ビ」のちょいハネ具合と「貨」のヒ部分が横長になっているところ、「貨店」の字間、たまらないです。
赤いショーウィンドウとひまわりの造花が可愛らしい。
年季の入った消火栓と鏡のある階段。
2階部分には、喫茶店、時計屋、お食事処、ランドセル専門店、本屋など、いくつかのお店が並んでいた。
3階へと続く入口の階段。
ピカピカ光る看板が迎えてくれました。
階段を登りきったところにあった手書きのメニュー。
3階に入っている洋食レストランものでしょうか。
フロアを見渡してみる。
これが噂の3階。
入っているテナントは、先ほど壁にメニューが貼られていた洋食レストランの1つしかなく、がらんとしている。
広い空間の奥にぽつんと食品サンプルが置かれていた。
3階で唯一営業してるのは洋食レストランの「キッチン こも」
「手作りレストラン こも」
「スパゲッチマカロニの店 こも」
手書きメニューと店名看板の文字が愛らしい。
メニューが書いてある岡ビル百貨店の紙のアップ。
値段の下の「岡」マークが素敵。
10時30分のオープンと同時に入店。
私はオムライス(ミニサラダ付)を注文した。
たまごの上にケチャップライス5粒くらい乗っかってた。チャームポイント。
パプリカ、ベーコン、玉ねぎ、なすだけだと思ってたら、半分くらい食べたところで急にマッシュルームと鶏肉とピーマンが出てきた。具だくさんでとても美味しかった。
オムライスが来る前に、1組の老夫婦が入店してきた。
2人ともハンバーグ・エビフライの盛り合わせなどの、結構ボリューミーな食事を注文した。
どうやら常連っぽい。のんびりと会話をしながらこもの料理を楽しんでいた。
店内にはカウンターとテーブル席が数席あり、予想を裏切らないレトロさだった。
窓の外からは店内と対照的にチェーンの居酒屋の大きな看板や銀行が見えた。
外は真夏の暑さでも、静かでちょうど良い涼しさの店内が居心地が良い。
老夫婦は私よりも早くごはんを食べ終わって帰っていった。
私はそのちょっと後にオムライスを食べ終えて、お店を出た。
行きも・帰りも・・・
楽しい買物と憩のデパート
包装紙と銀色のリボンできれいにラッピングされたプレゼントの看板。
お礼の言葉を伝えるためだけの看板。
こんなふうに送り出されたら嬉しい。
また来ます。
「岡ビル百貨店」は以前から取り壊しの予定があるらしく、なくなってしまう前にどうしても来てみたかった。この日は残念ながら4時間ほどしか岡崎に滞在できなかったが、また店内の雰囲気を味わいながら散歩したり、「こも」で手作り料理が食べたい。その時は“スパゲッチ”を注文してみようと思う。
私はまた自転車を漕いでJR岡崎駅に戻ると、昨日名古屋駅近くの金券ショップで買った青春18きっぷの1回残りで東京に帰った。