怖い話をしてみたい

わたしの通っていた高校は、都内にある中高一貫の女子校だった。

中学棟は数年前に改装されて新しかったが、高校棟と、体育館や集会ホール、カフェテリアなどがある管理棟は古く、夜になると特に怖く感じた。

夜の学校が不気味に感じるのは当たり前かもしれないが、この学校にまつわる怖い噂の存在がわたしの恐怖心をさらに煽った。

地下にある合宿所の押入れのさらに奥に扉があって、そこには何かを封印するかのように無数のお札が貼られているだとか、戦争で亡くなった人の遺体を一時的に集めておく場所にこの学校が建てられたとか、そんな噂を聞いたことがあった。

今思えば、よくある学校の七不思議みたいなもので本気にする必要はないと思うが、当時は1人で暗い廊下を歩いている時に怖い噂を思い出してしまって少しゾッとした。

高校3年生の時、夏と冬に勉強合宿があった。

わたしの学校はいわゆる“自称進学校”で、学校の中に予備校のようなシステムがあった。そのため、合宿も学校内で行われた。

おそらく予備校で行われるような勉強合宿と内容は相違ないが、周りの人が全員友だちだったので必要以上に気を張ることもなく安心して勉強に取り組むことができた。

夏の合宿は無事終わり、冬休み中に2回目の勉強合宿が行われた。

1日目の授業とテストが全て終わり、自習時間の前、管理棟1階のトイレでわたしと友だちは歯磨きをしていた。

トイレの間取りは確かこんな感じだった。

このトイレは間取りからもわかる通り、入口は1つしかない。
私たちが歯磨きをしている間、誰もトイレに入ってこなかったし、元々入っている人もいなかった。

洗面所で歯磨きをした後、わたしと友だちはトイレの個室に入った。

3つある個室のうち全て空いていたが、それぞれ1番手前と1番奥の個室に入ったと思う。
そして2人とも同じくらいに個室を出て、洗面所の鏡の前で喋っていた。

すると、わたしたち2人しか入っていなかったはずのトイレの個室から人が出てきた。

歯磨きが終わって個室に入ろうとした時、間違いなく個室は3つとも空いていた。
わたしと友だちは手前と奥に入ったので唯一真ん中の個室が空いていたが、わたしたちが入っている間に誰かが隣に入ってきた様子はなかった。

隣の個室なのだから、誰かが入ってきたらさすがに足音やドアを開ける時の物音で気付くはずだ。それなのに人が入ってくる気配は全く感じなかった。

また、個室に入るには必ず洗面所の横を通る。わたしたちがトイレを済ませて洗面所でおしゃべりをしていた時にも新しく誰かが入ってくることはなかった。狭いトイレなので、おしゃべりに夢中になって人に気付かなかったという可能性は低い。

わたしと友だちは無言で顔を見合わせた。

元から誰もトイレにはいなくて、わたしたちが個室に入っている時も、出てからも誰も入ってこなかったという認識は2人とも同じだった。

トイレから出てきた人物は友だちと同じA組の生徒だったので心霊体験とはならなかったが、誰もいるはずのないところから人が出てきたのでかなり怖かった。
あの子は一体どこからやってきたんだろう。

怖い話がちょっと好きだ。

ものすごく好きというわけではないけれど、夏のテレビで心霊映像特集や「ほん怖」が放送されていたら必ず観る。
父はわざわざ「おい、6chで怖いやつやってるぞ」とわたしが見逃さないように教えてくれたりする。

わたしはお化けを見たことがないし、身近に霊感がある人もいない。

なので、勉強合宿の話は自分が体験した中で精一杯の怖い話でした。怪談をしてみたかったけど怪談じゃなかった。

たぶん、わたしと友だちが個室入ってる間に入ってきた説が1番現実的だけど、本当に誰の気配もしなかったんだよ、、

誰もいないはずのトイレから出てきた人が知ってる人だったからまだ良かったけど、全く見たことない人だったら…と思うとめっちゃ怖いですね。

ちょっとした心霊体験がある人に憧れたりもしたけど、勉強合宿の時も十分怖かったし(心霊じゃなくて不思議体験だけど)、もし実際に心霊体験をしたら怖すぎて1人で寝られなくなりそうなので、自分は見聞きする側でいいかなと思った。

そういえば、夏休みの時期のお昼〜夕方くらいにやっている「ほん怖」の再放送、今年もあるのかな。

ほん怖の時期にほん怖の再放送を自宅でくつろぎながら見てる時間、かけがえのない夏の瞬間すぎて大好きです。

今年の夏の午後も、涼しい部屋で紅茶を飲みながら怖がりたい。